「知床」の世界自然遺産登録まで
登録までの経過
羅臼町と斜里町に位置する「知床」は昭和39年国立公園の指定を受けていますが、両町による世界自然遺産登録に向けた検討を始めたのは平成6年の知床国立公園指定30周年が契機で、本格的な検討は平成9年からとなっています。
以後、関係者による国内の世界自然遺産登録地の視察や、登録に向けた住民啓発などの推進運動を行ってきたところであります。
平成15年 「知床」は世界遺産暫定リストに選定され、平成16年1月には世界自然遺産候補地として決定し、「ユネスコ世界遺産センター」に対し正式に推薦書が提出されました。
その後、同年7月に国際自然保護連合(IUCN)による現地調査が行われ、以後二度にわたる書簡が届き地元関係者と協議のもと、日本政府から書簡に対する回答をしたところであります。
平成17年5月31日、IUCNの勧告内容が示され、「知床の世界自然遺産登録は確実」のものとなり、同年7月10日~17日に開催された第29回世界遺産委員会(於:南アフリカ/ダーバン)で、「知床」の世界遺産リストへの登録が正式に決定されました。(正式決議日は、最終日の7月17日)
世界遺産条約の概要
昭和47年 第17回ユネスコ総会で、世界遺産条約が採択されました。
発効は昭和50年で、目的は「顕著で普遍的な価値を有する遺跡や自然地域などを人類全体のための世界の遺産として保護、保存し、国際的な協力及び援助の体制を確立する。」としています。
締約国は、平成17年3月31日現在180カ国で、日本は、平成4年に締結し、125番目の締結国となっています。
※ユネスコ‥「国際連合教育科学文化機関」:事務局~フランス/パリ
※世界遺産条約の正式名‥「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」 IUCN(国際自然保護連合)
IUCN(国際自然保護連盟)
IUCNとは、国際自然保護連合(本部~スイス/グラン市)のことで、ユネスコから委託された世界自然遺産の審査機関です。
77の国家委員、114の政府機関会員、807のNGO(民間活動団体)、約1万人の科学者をメンバーとする、世界最大の自然保護機関となっています。
世界遺産の登録数
平成17年5月現在、合計788件が登録され、内訳は次のとおりです。
文化遺産 | 世界的な見地から見て歴史上、美術上、科学上顕著で普遍的価値を有する記念工作物、建造物群、遺跡を対象661件 |
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自然遺産 | 世界的な見地から見て鑑賞上、科学上又は保全上顕著な普遍的価値を有する特徴ある自然の地域、脅威にさらされている動植物種の生息地、自然の風景地等を対象154件 |
複合遺産 | 文化遺産と自然遺産との両面の価値を有するものを対象23件 |
わが国の世界遺産
自然遺産【計5地域】(記載年月)
- 屋久島‥鹿児島県(平成5年12月)
- 白神山地‥青森県・秋田県(平成5年12月)
- 知床‥北海道目梨郡羅臼町、斜里郡斜里町(平成17年7月)
- 小笠原諸島‥東京都(平成23年6月)
- 奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(令和3年)
文化遺産【計21地域】(記載年月日)
- 姫路城(平成5年12月)
- 法隆寺地域の仏教建造物(平成5年12月)
- 古都京都の文化財(平成6年12月)
- 白川郷・五箇山の合掌造り集落(平成7年12月)
- 原爆ドーム(平成8年12月)
- 厳島神社(平成8年12月)
- 古都奈良の文化財(平成10年12月)
- 日光の社寺(平成11年12月)
- 琉球王国のグスク及び関連遺産群(平成12年12月)
- 紀伊山地の霊場と参詣道(平成16年7月)
- 石見銀山とその文化的景観(平成19年7月)
- 平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺産群―(平成23年6月)
- 富士山―信仰の対象と芸術の源泉(平成25年6月)
- 富岡製糸場と絹産業遺産群(平成26年6月)
- 明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業(平成27年)
- ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-(平成28年)
- 「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群(平成29年)
- 長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(平成30年)
- 百舌鳥・古市古墳群-古代日本の墳墓群-(令和元年)
- 北海道・北東北の縄文遺跡群(令和3年)
- 佐渡島の金山(令和6年)
世界自然遺産のクライテリア(登録基準)
1.<地形・地質> | 過去の生命の歴史や地球の歴史の証拠となるような、重要な地形、地質等がよくあらわれている地域。 |
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2.<生態系> | 現在も進行中の生物の進化や、生物群集の見本となるような極めて特徴のある生態系を有する地域。 |
3.<自然景観> | ひときわすぐれた自然美をもった、自然現象や景観を有する地域。 |
4.<生物多様性> | 絶滅危惧種の生息地や、生物多様性の保全上最も重要な生物が、生息、生育する地域。 |
知床が評価された登録基準の内容(IUCNの評果)
生態系 | 知床は北半球で最も低緯度に位置する季節海氷域であり、季節海氷の形成による影響を大きく受け、特異な生態系の生産性が見られるとともに、海洋生態系と陸上生態系の相互関係の顕著な見本である。 |
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生物多様性 |
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※なお、日本から提案の「自然景観」は、登録基準に合致しないとされました。
このページの更新日:2024年10月8日